嗅覚とストレスの意外な関係とは?無臭の塗料でリラックスできる空間づくりを

記事 オーガニックペイントサポーター 原野 光佳

監修 シックハウス診断士 加納亜由美

「部屋で過ごしていると、ちょっとしたにおいでも気になってしまう…」 こういった経験がある人は多いのではないでしょうか。

埃やカビ、エアコンの風、洗剤といった身の回りのにおいはもちろん、新しい家具や家電のにおいが気になり、疲れてしまう方は少なくありません。

部屋の中でも面積が大きい壁や天井、床に使用される塗料は、室内の空気環境に大きな影響を与えます。 においに敏感な方がDIYなどで室内を塗装する時は、塗料の選び方には十分注意が必要です。

このコラムでは、嗅覚とストレスの関係性、においに敏感な人の塗料選びのポイント、香りでリラックスできる空間づくりのアイデアなどを解説していきます。

嗅覚とストレスの関係性|なぜ人はにおいで疲れるのか

嗅覚とストレスには深い関係性があります。日常のちょっとしたにおいでも疲れてしまうのには、嗅覚の性質と脳への伝わり方が関係しています。

実は、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の中で一番強い感覚は「嗅覚」と考えられているんです。
その理由は、五感の中で嗅覚のみが感情・本能を司る「大脳辺縁系」にダイレクトに伝わるからです。嗅覚以外の感覚は、理性を司る「大脳新皮質」を経由し、いったん情報が整理されます。

同時に、嗅覚がもっとも人の記憶に残りやすいといわれています。
昔好きだったお店をふと思い出した時、店員さんの顔や買ったものは忘れていても、香りだけはなんとなく覚えている…といった感覚は、まさに嗅覚の強さを表しています。

においが脳に伝わる仕組みを、以下で説明します。
1、鼻から香り成分(においの元)が入る
2、鼻の奥にある嗅上皮の嗅覚受容体で感知される
3、においの情報が嗅神経を通って大脳辺縁系に伝わる

このように、においは感情や本能に直接働きかけるため、心身にさまざまな影響を与えます。
特に、不快なにおいは「危険信号」として認識され、無意識にストレスとして蓄積されてしまうのです。嗅覚が敏感な人ほど、においに気づきやすく、疲れやすい傾向にあります。

だからこそ、長時間過ごす室内の空気環境を整え、快適な空間を保つことが大切です。

においに敏感な人の塗料選びのポイント

においはストレスの原因になるだけでなく、感情や気分、体調にも影響を与えます。
特に空気がこもりやすい室内では、においの影響を長時間受けやすいため注意が必要です。

冒頭でもお伝えしたように、室内の大部分を占める壁や天井、床に使用される塗料は空間のにおいを左右する要素なので、「においが強い塗料ではないか?」を事前に確認しておきましょう。
ここでは、においに敏感な人が塗料を選ぶ際のポイントを解説します。

油性ではなく水性を選ぶ

塗料を大きく分けると「油性」と「水性」の2種類があります。このうち、においがストレスになりやすいのは「油性塗料」のほうです。

その理由は、油性塗料に含まれる有機溶剤(シンナー)にあります。有機溶剤は塗料を薄めて塗りやすくするために用いられますが、乾燥する過程でVOC(揮発性有機化合物)として空気中に放出され、独特の刺激臭を発生させます。

特ににおいが強く感じられるのは乾燥時で、屋外であれば通常3日程度でにおいが気になりにくくなりますが、室内の場合は1週間程度においが残ることがあります。
VOCは、呼吸を通して体内に入り、皮膚や目からも吸収される可能性があるため、人体に影響を及ぼすことがあります。室内で長時間においに曝されると、不快感が生じるだけでなく、急性中毒やシックハウス症候群、化学物質過敏症などの健康被害のリスクもあるので注意が必要です。

一方、水性塗料は油性塗料に比べてVOCの含有量が少ない傾向にあるため、においに敏感な方や室内塗装で使用する場合は、水性塗料を選ぶのが基本となります。

ホルムアルデヒド発散量が少ない(F☆☆☆☆)

塗料の有機溶剤に含まれる代表的なVOCが「ホルムアルデヒド」です。無色の気体で目には見えませんが、ツンとする刺激臭がします。
塗料以外にもベニヤ板やパーティクルボードなどの建材、家具などから発生することがあり、濃度が高くなるにつれて人体への影響が大きくなることで知られています。

ホルムアルデヒドを表す単位は「ppm」で、これは1㎥の空気中の濃度を示すものです。
0.08ppm程度になると鼻や目に刺激を感じやすくなり、厚生労働省のガイドラインでも室内濃度指針値は0.08ppm以下とされています。

この指針値はあくまでも基準値なので、においに敏感な人やアレルギー体質の人は、数値を下回っていてもにおいを感知したり不快感を覚えたりする可能性があります。
注意したいのが、水性塗料にもホルムアルデヒドが含まれることがある点です。そのため、においに敏感な人が塗料を選ぶ際、ホルムアルデヒドの発散量が重要な基準の一つになります。

目安となるのが、「F☆(エフスターズ)」の表示です。これは、塗料や建材に含まれるホルムアルデヒド発散量を示すもので、発散量が少ないものほど星の数が多くなります。
発散量がもっとも少ないとされる等級が「F☆☆☆☆(フォースター)」です。フォースターは内装仕上げにおいて面積制限がないため、室内でも安心して使用できます。
「人体に安全で無害」と思われがちな自然塗料にもVOCやホルムアルデヒドが含まれることがあります。重要なのは、塗料の種類よりも「どの成分がどれだけ含まれているか」なので、自然塗料を選ぶ場合でも成分はよく確認するようにしましょう。

においが残りにくい水性塗料

水性塗料や自然塗料は油性塗料に比べると匂いが残りにくいです。しかし、製品によって含まれる成分に違いがあり、同じ水性塗料でも「においが残りやすいタイプ」と「残りにくいタイプ」があります。

水性塗料がにおう主要因は樹脂で、においが残りやすい傾向にあるのはウレタン樹脂を主成分としたウレタン系塗料です。これは、硬化する際の化学反応や添加剤など複数の要素が関係しています。
反対に、比較的においが残りにくいとされるのはアクリル系塗料です。アクリル樹脂は、揮発成分が少なく、化学反応を起こした時のにおいが比較的少ないとされています。

樹脂のほか、防腐剤や防カビ剤などの添加剤もにおいの発生源となりうるため、塗料選びの際は成分表示を確認するようにしましょう。

また、見落としがちですが、乾燥時間もにおいの残りやすさの判断基準になります。
乾燥時間が長い塗料ほどにおいが残りやすい傾向にあるため、製品ごとの乾燥時間も併せて確認しましょう。(速乾性塗料はにおいが強く出やすいですが、早く消える傾向にあります。)

有害物質を閉じ込める塗料を使う

既存の建材や家具から発生するにおいが気になる場合は、有害物質の放出を抑える機能を持つ塗料を使うのも一つの方法です。
リラックスできる空間づくりの第一歩として、取り入れてみましょう。

香りでリラックスできる空間づくりのアイデア

不快なにおいを減らすことで、室内環境はより快適なものになり、ストレスの少ない空間に近づきます。しかし、リラックスできる空間づくりには、においを減らすだけでなく、心地よい香りをプラスすることも大切です。

室内に香りをプラスする方法にはいくつかあります。それぞれ、使用するアイテムや香りの広がり方、香りの種類などが異なるため、用途や好みに合わせて選ぶと良いです。

ここでは、アロマ(精油)などを活用して、香りでリラックスできる空間づくりのアイデアをご紹介していきます。

香りをプラスするのに役立つアイテム

私自身も、リラックスできる空間づくりの一環として、香りを取り入れるようにしています。
香りをプラスするには何かしらツールが必要ですが、個人的によく使用しているのは「アロマオイル(精油)」やアロマディフューザー、ハーブ、飲み物です。(上の画像は、私が普段使用しているアロマディフューザーです。)

これ以外にも、香りをプラスするのに役立つアイテムにはさまざまな種類があるので、特徴をまとめます。

アイテム

特徴

ルームスプレー

・使い方が簡単

・価格帯が幅広い

・香りの持続は弱い

・手軽に香りを楽しめる

アロマオイル(精油)

・素材そのものの香りが楽しめる

・用途が幅広い

アロマディッシュ

・精油を皿の上に乗せて使う

・狭い範囲が香る

・手軽に香りを楽しめる

アロマデュフューザー

・精油を水に垂らして使う

・加湿器と兼用になっている物が多い

・部屋全体に長時間香りを拡散させられる

アロマウッド

・木に精油を垂らして使うシンプルなアイテム

・香りが穏やかに広がり、狭い範囲が香る

アロマキャンドル

・火を灯して香りを楽しむため、見た目のリラックス効果もある

・部屋全体に香りが柔らかく広がる

お香

・煙とともに香りを楽しむ伝統的なアイテム

・香りの拡散力が高く、部屋全体に広がる

ハーブ(ポプリ・サシェ)

・好きな場所に置ける、持ち運びも可能

・ハーブの素材感も楽しめる

茶香炉

・茶葉を温めて香りを引き出すアイテム

・ゆっくり香りが広がり、穏やかに香る

観葉植物、花

・見た目もリラックス感がある

・ナチュラルな香り

飲み物

・瞬間的に香る(場合によっては、部屋全体が香る)

・日常生活に取り入れやすい

日常生活に手軽に香りを取り入れたい人には、ルームスプレーや精油+アロマディッシュ、飲み物などがおすすめ。
部屋全体に香りを広げたい人には、精油+アロマディフューザー、お香がおすすめです。

リラックスできるかどうかは視覚的な要素も関係するので、インテリアに馴染むデザインや色の効果を考慮してアイテムを選ぶことも大切ですよ!

リラックス空間におすすめの香り

嗅覚の特性を活かし、香りによって心身をリラックスさせたり、気分を整えたりするのがアロマテラピーです。さまざまな研究から、嗅覚を通じて感情や本能に働きかけるだけでなく、精油成分が皮膚から体に働きかける可能性も示されています。

ご存じの方も多いかもしれませんが、リラックス効果のある香りとして知られているのが「ラベンダー」です。ラベンダーの香りを用いた試験では、交感神経の緊張を緩和させ、副交感神経が優位になることが示唆されています。(交感神経は活動や緊張を促す神経、副交感神経は休息を促す神経です)。

私自身も、就寝前にラベンダーの精油を取り入れています。ラベンダーの香りを嗅ぐと心が穏やかになり、自然に眠りにつきやすくなるように感じます。

ほかにも、リラックス系アロマとして、オレンジ・スイートやスイートマジョラム、カモミールなどが挙げられます。好きな香りを組み合わせて、オリジナルのアロマを楽しむのもおすすめです。

精油ではありませんが、コーヒーの香りも副交感神経を高める香りとして知られています。
においストレスが少ない空間で、好きな香りの飲み物を楽しむ。この瞬間、自然とリラックス空間が作られているとも考えられますね。

まとめ|リラックスできる空間づくりには、においの軽減と香りのプラスが重要

リラックスできる空間づくりには、「においを減らす」と「香りを取り入れる」の2つのアプローチが重要です。
塗料や建材、家具によるにおいのストレスを抑えるだけでなく、香りの持つリラックス効果を活かし、好みの香りをプラスすることで、より快適な室内環境に近づけられます。自分に合った方法で、無理なく快適な空間を目指しましょう。

たとえ良い香りでも、「強すぎる香り」や「人工的な香り」は刺激となり、疲れの原因になることがあります。アイテム選びの際は、原料にも着目してみてくださいね。

WEBライター 原野 光佳(はらの るか)
WEBライターとして、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。インテリアデザインやおしゃれな家具・雑貨、色の持つ効果などに関して勉強中です。化粧品や食品などもオーガニックを好んでおり、ユーザー目線でオーガニックペイントの魅力を伝えていきます!

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