カビはペンキで覆い隠しても繁殖を続けることがあり、塗膜が剥がれたりカビ自体が再発したりするケースがあるからです。カビの生えた壁を綺麗にしたいと思うのなら、まずはカビを適切に除去する必要があります。
このコラムでは、壁にカビが生えた場合の正しい対処法を解説します。同時に、カビの原因別の対処や塗装工程もみていきましょう。
カビの上にそのまま塗装してはいけない理由
壁にカビが生えると部屋の美観を損ねるため、ペンキで覆い隠してしまいたいと思うことでしょう。確かに、カビの上から塗装すれば、一時的にカビを隠すことが可能です。しかし、ペンキにはカビの繁殖を抑える効果は基本的にはないため、かえって美観が悪くなり、場合によっては壁材に影響を与えることがあります。
カビは塗膜の下でも繁殖することがある

「防カビ剤が入ったペンキや防カビ塗料なら、カビの繁殖を抑えられるのでは?」と思うかもしれません。
一般的な防カビ塗料には塗膜表面のカビを防止する効果は期待できますが、カビの殺菌や除去が行われるわけではありません。そのため、カビ自体は壁にそのまま残った状態となり、繁殖する可能性があります。
特に、日本の気候は高温多湿で、カビが発生しやすい室内環境になりやすいです。カビは湿気を好むため、降水量の多い梅雨の時期や結露ができやすい秋〜冬などに繁殖しやすいといえます。
下地(壁材)を傷める可能性がある

2019年の研究では、湿気にさらされた石膏ボードが、カビの生育によって重量・引張強度(引っ張りに耐えられる強度)が大きく低下したとされています。合板では、石膏ボード以上にカビの生育による影響を受け、材料内部の変化が確認されました。
このように、壁材によってはカビの繁殖や湿気で耐久性が低下してしまう可能性があるため、カビを放置しておくことは推奨されていません。
そもそも、壁にカビが発生しているということは、室内に湿気などの問題が生じていると考えられます。水分も壁材の耐久性を低下させる大きな要素なので、根本原因の解決から対処することが大切です。
健康に悪影響が出る恐れがある

カビや湿気のある室内環境は、くしゃみや鼻水、目の痒みなどのアレルギー症状や、小児における湿疹や喘息などにつながりやすいです。
また、シックハウス症候群など、長期的な健康被害が生じるケースもみられます。シックハウス症候群は、主に内装材や家具などの接着剤、塗料から発生するVOC(揮発性有機化合物)が原因とされています。
塗料の選び方によっては、シックハウス症候群の原因を増やしてしまいかねないため、健康面を考慮する場合でも根本的な解決が必要です。
カビの原因別!ペンキ塗装前の正しい対処法

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原因 |
対処法 |
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高温多湿な室内環境 |
換気や冷房、除湿などで温度や湿度を下げる |
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結露 |
換気や除湿を行い、必要に応じて窓リフォームを行う |
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雨漏り |
雨漏り修理や原因箇所の補修、防水処理を行う |
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配管などの水漏れ |
漏水箇所の修理、水分の除去・乾燥 |
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室内の通気不足 |
換気や空気循環を促す、家具を壁から離す |
カビが窓の周辺に集中している場合は結露、壁に水染みがある場合は雨漏り・水漏れ、家具の裏側に多い場合は通気不足などが考えられます。
ただし、カビの発生場所や目視だけでは原因を特定できない場合があります。特に、壁内部への浸水や雨漏りの疑いがある場合は、専門業者による確認が必要です。
カビを除去して塗装する手順|程度別の対処法

その上でペンキを塗っていくのですが、対処法はカビの広がり方や下地の状態によって異なります。カビの程度によっては、拭き掃除を行っただけでは塗装できない場合があるため注意が必要です。
ここでは、カビの程度を以下のように定義します。
①軽度:小さなカビが狭い範囲で発生している
②中程度:カビが後範囲に発生している
③重度:カビが下地(壁材)にまで浸食している
壁のカビが「表面だけの軽度のカビ」なのか、「下地(壁材)まで侵食しているのか」という点を確認し、適切な対処を行いましょう。
カビを除去する
軽度のカビは、自分で除去できる可能性が高いです。住宅で使用される一般的なビニールクロスやキッチンパネルであれば水拭きが可能なので、水や洗剤で落とすことができます。
綺麗な雑巾や布にエタノール(濃度70〜80%)を染み込ませる。
壁のカビが気になる部分を拭き取る。
落としきれないカビは塩素系漂白剤を使って拭き取る。
エタノールや漂白剤は、色残り・色落ちなどが起きる場合があるため、壁の目立たない部分で「試し拭き」しておくと安心です。軽度のカビであれば、家庭用中性洗剤や重曹を溶かした水でも代用できます。合板やコンクリート、モルタルなどは水拭きしやすい素材ですが、水分を吸いやすいため乾燥時間が重要です。
中程度のカビは、自分で拭き掃除をして落とせる場合もあれば、落としきれない場合もあります。すでにペンキを塗った箇所にカビが生えている場合は、既存の塗膜を剥がす作業が必要です。 また、下地まで傷んでいる場合やカビ臭が強い場合、除去しても再発する場合などはDIYでの塗装は避け、専門業者への相談も検討しましょう。
下地を十分に乾燥させる・補修する

カラッとした日に乾燥させるのが理想的ですが、乾きが悪い場合は扇風機やサーキュレーターを使用しましょう。
乾燥後、カビの状態だけでなく、下地の浮きや剥がれ、ひび割れなどがないかも確認します。
壁紙が剥がれている場合は専用の接着剤、ひび割れがある場合などはパテを使用して補修を行います。
下地に問題が生じている状態で塗装しないことが重要なポイントです。
軽度のカビであれば、この時点でカビ跡などはあまり気にならないかもしれません。
しかし、中程度のカビになると、壁紙表面にカビ跡が残っていたり、壁紙が浮いている・剥がれているといった状態のことがあります。下地が傷んでいなければ、壁紙を張り替えてから塗装することも検討しましょう。
下地処理を行う
壁にそのままペンキを塗装すると、密着性が低く、塗りムラが生じたり剥がれやすくなったりします。そのため、塗装の前には下地を整える「下地処理」を行うことが推奨されています。下地処理とは、主にサンドペーパーで塗装面を研磨し、プライマーやシーラーで下塗りを行う作業のことです。この作業を行うことで、塗装が均一な仕上がりになり、塗膜の耐久性低下を防ぐことができます。
塗装する
ペンキを塗る前に養生を整え、マスキングを行ってペンキを塗らない場所を保護します。開封したペンキは、まずしっかりと攪拌(かくはん※混ぜること)しましょう。成分に偏りがあると、塗りムラの原因になります。
塗装する際は、広い面はローラーで、狭い面(壁の端など)は刷毛を使うのが基本です。一度に厚塗りするのではなく、余分な塗料を落としてから均一に塗っていくようにします。
塗装の途中で塗りムラが気になった場合、塗ってすぐであれば塗り直しできます。しかし、乾き始めた箇所は、乾燥させてから全体を塗り直した方が綺麗に仕上がります。
製品ごとの乾燥時間をしっかり守り、二度塗りや三度塗りをして色を重ねていくのがポイントです。
塗装の際は、窓を開けるなど換気を行いながら作業を進めるようにしましょう。
壁のカビ対策法やお手入れの注意点

しかし、カビの程度によっては掃除で完全に除去できなかったり、黒いカビ跡が残ったりするため、普段のお手入れで「カビが生えない環境づくり」をすることが大切です。
ここでは、壁のカビ対策法やお手入れの注意点をまとめていきます。
換気や除湿を心がける
カビが生えない環境づくりの第一歩は、換気や除湿から始まります。温度20〜35℃、湿度80%くらいになるとカビが生えやすくなるため、適切な温度・湿度管理は必須です。1日に2〜3回、1回5〜10分程度を目安に換気を行い、室内の湿気を取り除くようにしましょう。
カビ対策に効果的な換気の方法は、対角線上にある窓を二ヶ所開けて、空気の通り道を作ることです。窓が一ヶ所しかない場合は、換気扇やサーキュレーターを屋外に向けて空気を追い出すようにします。 また、結露が気になる時期には、除湿器を窓際に設置することも効果的です。
こまめな掃除で埃を取り除く
カビが生えやすい条件の一つが、「養分(埃)」です。カビは埃や汚れなどを栄養源にして繁殖するため、カビ対策にはこまめな掃除が有効となります。室内の埃や髪の毛、皮脂汚れ、食べかすなどをこまめに取り除き、壁の拭き掃除を定期的に行うことでカビが生えにくい環境にしましょう。
特に、キッチンや浴室などの水回りは湿気が溜まりやすく、隣接する部屋に影響する場合があります。水回りは使用後に必ず水滴を拭き取るようにして、換気扇を回すなどで湿気を取り除くことが重要です。
カビ取り剤の取り扱いには注意が必要
カビ取り剤を使用することで、頑固なカビを落とせる場合があります。しかし、カビ取り剤は壁材によっては使用できないことがあるため、必ず製品の表示を確認しましょう。掃除前に、目立たない場所で試してから使用すると安心です。
特に、紙クロスや布クロスなどは、変色や劣化の原因になるため注意しなければなりません。
塩素系カビ取り剤は、次亜塩素酸ナトリウムを主成分としており、除菌・漂白作用が強い分、肌への刺激も強いです。中毒の原因になることもあるため、使用の際はマスクや手袋を着用して、換気をしっかり行いましょう。
また、酸性タイプの洗剤と混ぜると「塩素ガス」が発生するため、併用は避けてください。
まとめ|壁にカビが生えたら、取り除いてからペンキで綺麗に仕上げよう

雨漏りや水漏れなど緊急性の高い原因は優先して解決し、室内環境を見直すこともカビ対策には重要です。ペンキを塗る際は、「下地が十分に乾燥しているか」「傷みなどはないか」という点を確認した上で作業を始めてください。
カビを除去して壁を塗り直すなら、壁の状態や用途に合ったペンキを選ぶことも大切です。室内環境への配慮を重視するのであれば、低VOCの水性塗料やゼロVOCのオーガニックペイントなども選択肢に入れましょう!

WEBライター 原野 光佳(はらの るか)
WEBライターとして、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。インテリアデザインやおしゃれな家具・雑貨、色の持つ効果などに関して勉強中です。化粧品や食品などもオーガニックを好んでおり、ユーザー目線でオーガニックペイントの魅力を伝えていきます!
