赤ちゃんのいる家庭でペンキを塗る場合、油性塗料の影響を考えなければなりません。
「油性塗料の赤ちゃんへの安全性は大丈夫?」「シンナー臭に悪影響はない?」など、心配ごとの多い親御さんも多いと思います。
最近では小さいお子さんと一緒にDIY塗装される方も増えており、内壁や天井、床、家具などあらゆる箇所がその対象です。
油性塗料が赤ちゃんに与える影響は少なからずあり、シンナーによる健康被害なども懸念されます。
このコラムでは、油性塗料が赤ちゃんに与える影響について、シンナー臭による症状や対策法もまじえて解説します。
目次
油性塗料の特徴~リスクと健康被害について

・油性塗料ってそもそもどんな塗料?
・油性塗料にはどんなリスクがある?
・健康被害や人体への影響は大きい?
など、油性塗料に関する疑問や不安を解消しましょう。
油性塗料は有機溶剤が用いられた塗料
油性塗料とは、塗料を溶かすのに有機溶剤が用いられた塗料のことです。塗料を水で溶かす水性塗料と比較されることが多く、一般的には油性塗料の方が耐候性が高いとされています。
また、密着性が高く仕上がりが美しいメリットがあるため、主に外壁塗装で使用されています。
油性塗料を塗ることで強靭な塗膜ができるので、建物を長期間保護できるのも特徴的です。
VOCやシンナー臭によるリスクがある

VOCは、揮発性を持つ物質の総称で、50〜100℃、240〜260℃までの沸点で大気に蒸発します。
油性塗料以外に、接着剤や建築資材、ガソリン、合成洗剤などに含まれており、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質などの大気汚染の原因になるものです。健康被害を引き起こすリスクもあるため、国内外で法による規制やVOC削減への取り組みが行われています。
中でも、油性塗料に含まれるVOC(トルエンやキシレン、酢酸エチルなど)は、強いシンナー臭の原因になる物質です。
これにより、室内で油性塗料を使用すると、シンナー臭による人体への影響を及ぼす恐れがあります。
健康被害や人体への影響が大きい
油性塗料から発せられるシンナー臭は、健康被害の原因になり、人体への影響が大きいです。赤ちゃんはもちろん、大人の方にも悪影響を及ぼす恐れがあります。「気分が悪い」といった体調の変化や頭痛、めまい、吐き気などの軽度・中度の症状から、中毒など重大な事故に繋がった事例もあります。
油性塗料のシンナー臭は、塗装後すぐに消えるというわけではなく、3日後でも残っていることがあるため、常時過ごす室内での使用はリスクが大きいです。
油性塗料が赤ちゃんに与える影響は?

心身の一時的な症状が起こる可能性がある
赤ちゃんが油性塗料の臭い(シンナー臭)を吸い続けると、心身の不調が現れる可能性があります。例えば、身体的な症状として、以下のものが挙げられます。
・呼吸が浅くなる
・皮膚のかゆみ、湿疹
・吐き気、嘔吐
・喉の痛み、咳、鼻水、くしゃみ
・発熱
・食欲不振
また、以下のように精神的な不調も起こりやすいです。
・泣き止まない
・ぐずる
・眠れなくなる
・集中力がなくなる
これらの多くは一時的な症状なので、油性塗料の臭いがしなくなれば解消されるケースがほとんどです。
より深刻な影響といえるのは、次の項で挙げる長期的な影響です。
赤ちゃんの健康や発育に悪影響を及ぼすことがある

VOCなどの化学物質は食事や空気を介して体内に入りますが、床面に近い場所ほど多く存在するといわれています。つまり、ハイハイしたり寝ていたりする時間の長い赤ちゃんは、大人よりもVOCを体内に取り込みやすいのです。
以下は、子どもと大人の一日の呼吸量と食事量を比較したものです。
|
子ども |
大人 |
|
|
1日の呼吸量 |
9.3㎥ |
15㎥ |
|
(体重1㎏あたり) |
0.6㎥ |
0.3㎥ |
|
1日の食事量 |
1193g |
2029g |
|
(体重1㎏あたり) |
79.5g |
40.6g |
赤ちゃんは大人よりもVOCへの耐性が低い上、体重あたりの吸気量も多いため、VOCの影響を受けやすいと考えられます。
シックハウス症候群の原因になる

シックハウス症候群とは、室内の空気環境が悪化することで、生活する人に健康被害が及ぶことです。一時的な症状とは異なり、目や鼻、喉の症状、頭痛、めまい、倦怠感などの症状が長期的に続くことが問題となります。
家庭内での主な発生源は、塗料や接着剤、芳香剤、防虫剤、断熱材、灯油などの製品です。
これらの製品には、厚生労働省により室内濃度指針値が策定された13の化学物質が含まれている可能性があります。
・ホルムアルデヒド
・トルエン
・キシレン
・パラジクロロベンゼン
・エチルベンゼン
・スチレン
・クロルピリホス
・フタル酸ジ-n-ブチル
・フタル酸ジ-n-エチルヘキシル
・テトラデカン
・ダイアジノン
・アセトアルデヒド
・フェノブカルブ
赤ちゃんは大人よりもVOCの影響を受けやすいため、上記の化学物質によるシックハウス症候群にもかかりやすいとされています。
油性塗料による赤ちゃんへの影響を最小限にするための対策法

以下で、具体的な対策法をご紹介します。
水性塗料を使用する
油性塗料による赤ちゃんへの影響が気になる場合は、「そもそも油性塗料を使用しない」ことも検討してみてください。水性塗料は有機溶剤の代わりに水を使うため、油性塗料に比べてVOCの含有量が少なく、シンナー臭はほとんどありません。水性塗料の多くが低VOCを特徴に発売されており、中にはオーガニックペイントのような「ゼロVOC」「有害物質ゼロ」といった塗料も売られています。 VOCや有害物質が含まれていない塗料は、赤ちゃんへの影響を最小限に抑えられます。
従来、水性塗料は油性塗料よりも耐久性が低いといわれてきましたが、今は油性塗料と同等の耐久性が期待できるとの見解も多いです。 水性塗料は水で流れるわけではなく、一度塗膜を形成したら水で落ちることはありません。ましてや、雨風に晒されることのない室内の壁や家具などであれば、水性塗料でも耐久性は十分です。
油性塗料の中でも、天然オイルを使用した塗料は低VOCの可能性があります。
しかし、これらはオイル系塗料なので、ペンキとは異なる点に注意が必要です。
塗装中や塗装後の換気を徹底する
塗装中や塗装直後は、塗料の臭いに影響を受けやすいです。室内からVOCなどの化学物質を外に排出するために、窓を開けての換気を徹底しましょう。夏場や冬場でも、塗装中は窓を開けての換気が必須です。
エアコンをつけたままでも問題ありませんが、①窓を少し開けて常時換気する②窓を全開にして30分おきに数分間換気するーー①②のいずれかの方法で換気することが推奨されます。
窓の開け方は、2ヶ所を対角線上になるように開けるのが理想的です。
もし、窓が1ヶ所しかない場合は、ドアを開けて、扇風機やサーキュレーターで風の流れを作ります。
油性塗料を塗った部屋に入れない

どうしても油性塗料を使用しなければならない場合、赤ちゃんをその部屋に入れない、なるべくその場所に近づけない、などの対策が必要です。
赤ちゃんを部屋に入れてもいいかの判断が難しい時は、市販のVOC測定器で測定する、あるいは専門機関に依頼して測定してもらうなどの方法で現状把握できます。
厚生労働省が提示する各VOCの室内濃度を下回っているかどうかが、赤ちゃんを部屋に入れてもいいかの判断基準となるでしょう。
まとめ|油性塗料の赤ちゃんへの影響は大きい!対策が必須です

メリット以前に、油性塗料の成分やシンナー臭などの赤ちゃんへの影響の大きさを考えると、今回紹介した対策法の実施は必須といえます。
室内の壁塗装や家具塗装などを行う際は、水性塗料の使用を検討してみてくださいね。

WEBライター 原野 光佳(はらの るか)
WEBライターとして、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。インテリアデザインやおしゃれな家具・雑貨、色の持つ効果などに関して勉強中です。化粧品や食品などもオーガニックを好んでおり、ユーザー目線でオーガニックペイントの魅力を伝えていきます!
