ペンキを塗装する際にもっとも重要といわれるのが「下地処理」です。
下地処理は塗装の準備と呼べるものですが、仕上がりを大きく左右するため、ペンキ塗装の手順の一つと捉えてもよいでしょう。
ペンキの下地処理剤にはいくつか種類があり、中でもよく使われるのがプライマーとシーラーです。初めてDIY塗装する方やこれまであまり下地を意識されなかった方は、「プライマーとシーラーの違いが分からない!どう使い分ければいいの?」と悩みやすいと思います。
このコラムでは、下地処理の基本やプライマーとシーラーの違い・使い分けについて解説します。
塗装面の材質によっては、別の選択肢もあるので併せて紹介しますね!
目次
ペンキ塗装の下地処理とは?
ペンキを塗装する前に行う下地処理とは、塗装面を整える作業のことです。ペンキはそのまま塗るだけでは密着性が低く、ムラが生じたり剥がれが起きやすかったりするため、ペンキが密着しやすい状態にする必要があります。
一般的には、次の手順で下地処理を行います。
1,塗装面の汚れを清掃する
2,旧塗膜や錆を落とす
3,サンドペーパーで研磨する
4,必要に応じて補修する
5,プライマーやシーラーで下塗りする
ペンキを塗る材質や塗装面の状態によって、手順が異なる場合がありますが、基本的には上の手順で進めます。

なぜ、下地処理が必要なのでしょうか。その重要性を解説します。
ペンキの密着性を高める
塗装面の状態はペンキの密着性に影響します。表面に汚れや凹凸があると、ペンキの密着性が低下し、剥がれの原因になります。汚れや埃、油分、カビ、旧塗膜などをきれいに落とすための清掃が必要です。下地処理は、ペンキが塗りやすくなるだけでなく、密着性を維持する役割もあります。
均一な仕上がりになる
旧塗膜や錆、汚れなどを落として下地の状態を整えると、均一な仕上がりになります。塗装面の汚れや凹凸は、ペンキ塗装時のムラの原因にもなります。ペンキの吸い込みが不均一だと、艶ムラやシミが発生することもあり、美観を損ねかねません。
塗装において「下地処理が7割、塗装が3割」と言われているのはこのためです。
耐久性や防食性を維持する
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下地処理をしないとどうなる? ・ペンキが早期に剥がれることがある ・ムラが目立つ仕上がりになる ・塗膜の耐久性が低下する ・密着せずペンキが浮いてくる ・錆や腐食、ひび割れが生じやすい ・ペンキ本来の艶が出ない など、デメリットが非常に多いです。 |
ペンキの下地剤「プライマー」と「シーラー」の違いは?

外壁塗装や内装、DIY塗装で一般的に使用されている下地処理剤は、プライマーとシーラーです。この他、フィラーと呼ばれるものが使用されることもあります。
ペンキの下地処理剤の違いを知り、DIY塗装で上手く使い分けをしましょう!
プライマーはファンデーションのようなもの
プライマーの主な役割は、下地(壁など)とペンキの密着性を高め、仕上がりを良くすることです。ファンデーションに例えると分かりやすいでしょうか。プライマーの語源は、最初を意味する「Primary」です。次に施工する材料、つまりペンキを強固に接着させる目的で使用されます。プライマーを使用することにより仕上がりがより綺麗になるというのは、お化粧を綺麗に仕上げようとファンデーションの下地が大事というにに似ているように感じます。
ペンキの下塗りでプライマーが向いているのは、金属や樹脂、プラスチックなどのツルツルした素材です。金属に塗装する場合、防錆機能を持ったプライマーが向いています。
また、木材の下地としてプライマーを使うことで灰汁止めや、上塗りとなる塗料の色を綺麗に出すために重要な役割となります。
シーラーはペンキの吸い込みを抑えるもの

「塞ぐ」を意味する「Seal」が語源となっており、下地の穴を塞ぐ役割があります。
コンクリートや木材など多孔質な素材は水を吸収しやすいため、ペンキの吸い込みが起きやすいです。吸い込みが起きると、色ムラや耐久性の低下の原因になるので、シーラーを塗って防止する必要があります。
シーラーには、プライマー同様に下地とペンキの密着性を高める作用もあります。
劣化した壁にはフィラーを用いることもある
プライマーやシーラーのほかに良く用いられる下地処理剤がフィラーです。フィラーは、埋めるを意味する「Fill」が語源となっており、ひび割れを埋めて塗装面の凹凸をなくす役割を持ちます。
フィラーは他の下地処理剤に比べて粘度が高く、厚塗りに向いているため、主にモルタルやコンクリートなどの外壁塗装で用いられます。外壁の傷みが激しい場合には、シーラーとフィラーが併用されることもあります。
室内壁の場合、プラスターボードの繋ぎ目などをフィラーで埋めてからプライマー下地を塗る流れとなります。
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ペンキの下地処理剤の色について 色は透明〜半透明、あるいは白やグレーが一般的です。 ほとんどの場合が白の下地処理剤を用いますが、塗りたいペンキが濃い色もしくは隠ぺい性が低い(明るい黄色や緑、赤、オレンジなど)場合は、グレーの下地処理剤が推奨されています。 |
プライマー・シーラー・フィラーの違いをおさらい
3種類あるペンキの下地処理剤の違いを、分かりやすく表にまとめます。DIYでペンキ塗装をする際、「どの下地処理剤を使えばいいの?」と悩んだ時は、比較して参考にしてください。
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下地処理剤の種類 |
主な役割 |
使用されやすい材質 |
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プライマー |
下地とペンキを密着させる |
金属、樹脂、プラスチック |
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シーラー |
ペンキの下地への吸い込みを抑える |
コンクリート、木材、モルタル、石膏ボード |
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フィラー |
塗装面の凹凸を埋める |
モルタル、コンクリート(劣化した壁がメイン) |
ほとんどのプライマーは上塗りを前提とした下塗り剤なので、単独使用は望ましくありません。ペンキでの仕上げが必要です。
しかし、一部の特殊プライマーは表面に塗膜を形成するので、必ずしもペンキ塗装(上塗り)が必要ではありません。
素材によって異なる下地処理の方法

代表的な素材と、下地処理の方法・手順を以下で説明します。
木材
木材は多孔質でペンキの吸い込みが激しく、油分・ヤニ・アクが出やすいのが特徴です。下地処理は、塗装面の油分・ヤニ・アクを除去し、吸い込みを抑える目的で行われます。
《手順》
1、サンドペーパーで表面を目荒らしします。特に、化粧板は表面がツルツルしていてペンキをはじきやすいので、サンディングが必要です。
2、サンドペーパーの番手は、中目と呼ばれる180〜240番が適しています。
サンディングで出た粉やヤニ、油分を拭き取ります。
3、木部用プライマーやシーラーで下塗りします。ヤニが多く出る木材の場合はヤニ止めシーラーがおすすめです。
コンクリート
コンクリートは木材同様にペンキの吸い込みが激しい素材なので、下地処理で吸い込み止めを行います。塗装面が粉っぽくなりやすい点への対処も必要です。《手順》
1、汚れやカビなどを清掃で除去します。
2、ひび割れや凹凸がある場合は、コンクリート補修材やフィラーで補修します。
3、サンドペーパーで目荒らしします。レイタンス(コンクリートのざらつき)を除去する際は80番くらいの粗目でサンディングします。塗装前の足付けでは、240番の中目や280番の細目を使うのが推奨されます。
5、養生を行ってからシーラーやコンクリート対応プライマーを塗ります。
金属

《手順》
1、錆や旧塗膜の除去が必要な場合、100番以下のサンドペーパーで研磨します。
2、塗装前は、240番のサンドペーパーで表面を整えると仕上がりが良くなります。
3、必要に応じて汚れを拭き取り、プライマーを塗布します。
石膏ボード
石膏ボードはペンキの吸い込みが強い素材ですが、ペンキの種類によっては下塗りなしで塗装可能です。ただし、パテは石膏ボードよりも吸い込みが大きく、パテ処理した部分のムラが出やすいです。パテをした場合は下塗りをして吸い込み止めを行います。
また、ペンキを塗装する際、他の素材より多めに塗料が必要になることがあります。
《手順》
パテ処理を行います。
180〜240番のサンドペーパーで研磨し、表面を平らにします。
シーラーもしくは石膏ボード対応プライマーを塗布します。
まとめ|ペンキの下地処理は仕上がりに大きく影響します

下地処理剤の種類や違い、素材別の下地処理の方法がお分かりいただけましたでしょうか。
ペンキの下地処理は塗装の仕上がりに大きく影響します。
特に、素材に合った下地処理剤を選ぶことが重要です。下地処理剤にはプライマー・シーラー・フィラーの3種類があり、それぞれ役割や用途が異なるため、素材への向き不向きがあります。
プライマーの中には、シーラーの代用になるものもあるので、下地処理剤を選ぶ時は、製品の説明をよく読むようにしましょう。

WEBライター 原野 光佳(はらの るか)
WEBライターとして、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。インテリアデザインやおしゃれな家具・雑貨、色の持つ効果などに関して勉強中です。化粧品や食品などもオーガニックを好んでおり、ユーザー目線でオーガニックペイントの魅力を伝えていきます!
