なぜホワイトボードではなく黒板なのか?

化学物質過敏症サポーター 木田順子

黒板というと、 昔からある古い道具という印象をお持ちの方も多いようです。 日本で黒板が使われ出したのは明治時代から。 最初は掲示板のような使われ方で、小さいサイズのものだったそうです。 明治5年に現在の東大である大学南校でアメリア人教師が黒板を学校に持ち込み、明治10年ごろまでには全国の学校で黒板が使われるようになったそうです。 黒板という呼び方はアメリカのブラックボードをそのまま訳して使っているためで、実際当時の黒板は黒でした。その後見やすさなどから緑の黒板が主流となりましたが、名前はそのまま黒板です。 英語だとブラックボードの他にチョークボードという言い方も多く使われます。

なぜホワイトボードではなく黒板なのか?

現在は黒板ではなく、ホワイトボードや電子黒板が使われることも多くなりました。チョークの粉が気になるかたはそちらの方がクリーンでいいという感想をお持ちかもしれません。 それでも、黒板は根強く人気です。 特にお店でのデザインの一部だったり、アートとして取り入れられるケースでは特に人気。 なぜホワイトボードではなく黒板なのか? 黒板塗料を販売して15年目の私が思う黒板の良さについて考えてみます。

実用性としての黒板のよさ

学校や公共の施設などで、採用されるには実用的で機能的な理由があります。 以下の2点が主な理由であることが多いようです。

見やすさ

黒板はマットなグリーンが多いですよね? 明治の頃は黒だった黒板が昭和になって緑が主流に変わります。 理由は黒より緑の方が光の反射が少なく目に優しい、見やすいからです。 昭和29年には黒板に関するJIS規格が制定され、その中で色彩や光沢度に関しても定められています。 ホワイトボードは白く光沢があるので反射するので、黒板の方が見やすい場合が多いのです。

チョークの手軽さ、使いやすさ

チョークは最後まで使え、価格もマーカーより安価。マーカーのようにキャップをしっかり閉めて乾燥しないようにする必要がありません。インクがかすれて文字がクリアでなくなる心配もありません。頻度高く使う場合はコストの差も大きいようです。 ちなみにチョークの色も各社見やすさを優先して変化しています。 色盲だと見えにくかった昔の赤チョークはオレンジっぽい明るいものに変わっていて誰にでも見やすい工夫がされています。
黒板のデメリットとしてすぐに思い浮かぶ、 粉が舞う、粉の掃除が嫌だ、ということを考慮しても 皆が見やすく、疲れずに使える黒板が良いとされることも多そうです。 チョークの粉に関しては、昔と違ってダストレスチョークが出たりと改善されています。 ダストレスチョークはチョークの粉が出ないのではなく、まとまりやすいようになっていて、重さで舞わずに落ちるのでダストレスのように使えるということだそうです。 私個人の感想としてはホワイトボードの消したカスの掃除も必要なのでさほど変わらないようにも思います。

昔の良い思い出と重なる

お店や個人住宅にデザインとして黒板が取り入れられる際は、 いわゆるデザイナーと呼ばれる方がお施主さんに提案することも多く、そのデザイナーさんが子供の頃に学校の黒板や、工事現場で使っていた古い黒板をもらって、夢中になって絵を描いて遊んだとお話を伺うことが何度となくありました。その楽しい思いをみんなにしてほしいという思いがあるようです。 私自身もミニ黒板を作ったことがあるのですが、知り合いの男の子が学校ごっこをすると欲しがりました。家に持って返って永遠に黒板を使って計算問題の授業をおばあちゃん相手にしたそうです。黒板=楽しいものというのは年齢関係な差そうです!

シュタイナーの黒板絵

教育者、哲学者であり、人智学の始祖としても知られるルドルフ・シュタイナーは、講義の際に受講者への説明として黒板絵を描きました。その黒板絵は20世紀の芸術に多大な影響を与え、抽象画としての評価も高く現在でも人気です。 またシュタイナー教育では生徒が黒板絵を描くので、そこで黒板に描くことが好きになることも多いと聞きます。

クリエイティブになれる

マーカーやマジックと違いチョークでの表現は強弱が自由に付けられて表現の幅が広いのが特徴です。なので学校の板書以外にもアート作品にも黒板が広く使われるんですね。 筆圧も伝わるチョークの文字や絵はその人ならではの味が出しやすい表現方法です。らしさを伝えたい場合はホワイトボードのマーカーよりも伝えやすいのではないでしょうか?

ニューヨークタイムスの記事に面白い記事を見つけました。
数学者の黒板だけの写真集、“Do Not Erase,”「消さないで」に関連しての記事です。
Why do mathematicians use chalk instead of whiteboard?
なぜ数学者はホワイトボードではなく黒板を使うのか?
ホワイトボードマーカーの匂いよりチョークの方がいい、という理由とともに アイデア、創造のために黒板を使うということが書かれています。
Google翻訳で読める便利な時代ですし、 黒板の写真も素敵ですのでぜひチェックしてみてください。

黒板アートがSNSで話題になったりしますよね? 現在はコンテストもあります。 ホワイトボードや黒板のメーカーである日学株式会社が主催し、 学校の黒板にチョークで絵を描き、その画像を応募します。

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