リビングやキッチン、子ども部屋など…。
気候が穏やかになる春に向けて、DIYの準備をしている方は多いのではないでしょうか。
赤ちゃんがいる家庭で塗装する時は、塗料の影響を考え、安全性を考慮すべきです。化学物質が含まれる塗料は、赤ちゃんの皮膚や呼吸器などに刺激が大きいです。急性中毒以外にも、さまざまな健康被害の原因になるため、塗装時は十分に注意しなければなりません。
このコラムでは、赤ちゃんがいる家庭で塗装する際の注意点を解説します。DIYを始める前に、ぜひ一度塗料の影響について知って、安全な塗料を選びましょう。
目次
塗装が赤ちゃんに与える影響とは?

・臭いによる影響
・化学物質による影響
・環境の変化による影響
主に、上記の3つの影響を受けます。
このうち、長期的に考えなければならないのが、化学物質による影響です。
赤ちゃんがいる家庭では、壁や天井、ドアなど建材のほか、ベビー家具や玩具などをDIY塗装される方が多いです。
常に高い場所にある天井を除き、どれも赤ちゃんの手の届く場所にあるもの。赤ちゃんはなんでも口に入れたりかじったりする傾向にあるため、「塗料を舐めるのでは?」「剥がれた塗装を食べるのでは?」といった心配がつきものです。
塗装中の影響だけでなく、赤ちゃんが塗料を舐めた場合の影響を考える必要があります。
赤ちゃんの健康を守るために|塗装の注意点
赤ちゃんに与える影響を最小限にするためには、どの種類の塗料を選ぶか、塗装の環境をどう整えるか、そして安全対策を意識することが重要です。以下で順番に塗装の注意点を挙げていきます。
塗料には有害物質を含むものがある

赤ちゃんの健康に影響が大きいのは、油性塗料です。
油性塗料は希釈剤に有機溶剤(シンナー)を用いるため、強い臭いがあり、VOCなどの有害物質を多く含みます。
VOCは揮発性が高い物質の総称で、呼吸を通して人の体内に吸収される恐れがあるものです。代表的な物質にトルエン、キシレン、酢酸エチルなどが挙げられ、これらは光化学スモッグを発生させる原因の一つとされています。室内では、シックハウス症候群や化学物質過敏症などの要因として問題視されています。
壁など広範囲に塗装する場合は、心身の一時的な症状のみならず、慢性的な症状を引き起こす可能性が高いです。
以上のことから、従来は塗装というと「油性塗料」が主流でしたが、現在ではVOCを規制する法制度が設けられており、水性塗料への移行が推奨されています。
塗料はにおいなど一時的な問題だけでなく、長期的な問題につながることを知っておきましょう。
赤ちゃんが触らないようにする

例えば、子ども部屋を塗装するのであれば、塗装中〜完全硬化(内部まで乾燥)までは赤ちゃんを部屋に入れないようにしましょう。指触乾燥(表面のみの乾燥)の状態だと、VOCなどの化学物質が大気中に残っている可能性があります。
製品によって異なりますが、完全硬化までに24時間程度必要です。
この間は、赤ちゃんが塗装室内の空気を吸い込んだり、塗装箇所に触れたりすることのないよう、作業環境を整えておきましょう。
特に、塗料缶やチューブが置きっぱなしになっていると、赤ちゃんが塗料を大量に口に入れてしまう危険があります。赤ちゃんの目に付かないところ、かつ手が届かないところにきちんと保管するようにしてください。
万が一、赤ちゃんが塗料を舐めた場合は、塗料の種類ごとに適切な処置をおこなう必要があります。
窓開け換気で室内環境を改善する

室内の空気を効率よく入れ替えるには、5分程度の窓開け換気を1時間に1回以上行うのがよいとされています。
特に、春から夏にかけて気温が高い時期は、VOCが揮発しやすいです。エアコンの使用に関係なく窓開け換気をしましょう。
以下、WHO(世界保健機関)におけるVOCの分類と揮発温度です。
|
VOCの種類 |
揮発温度 |
物質例 |
|
高揮発性有機化合物(VVOC) |
~50℃ |
ホルムアルデヒド |
|
揮発性有機化合物(VOC) |
50~260℃ |
トルエン、キシレン |
|
半揮発性有機化合物(SVOC) |
260~400℃ |
フタル酸エステル類 |
|
粒子状有機化合物(POM) |
380℃以上 |
ベンゾピレン |
窓開け換気は、塗料の乾燥を早めるため・VOCを屋外に排出するために非常に有効な手段となるので、塗装中から乾燥まで継続しておこないましょう。
換気の際の事故防止を徹底する

一般的に子どもの落下事故は、エアコンの稼働時間が短い「春」と「秋」に集中しています。しかし、塗装は季節を問わずおこなうため、夏や冬でも十分に注意しなければなりません。
落下事故は子どもだけで遊んでいる際に発生しやすい傾向にあります。窓の開いた部屋で赤ちゃんを一人にさせないことが基本です。
別室に赤ちゃんがいる場合は、ドアを開けっぱなしにしないこと。一人歩きを始めるとドアノブに手が届き、自力で開けられるようになります。
ハンドル式のドアノブは力の弱い赤ちゃんでも比較的開けやすいため、補助錠やストッパーを設置しておくと安心です。
その他、以下の対策法を併用するとより安全性が高まります。
・窓の近く、ベランダに足場になる物を置かない
・ベランダの室外機は手摺から60㎝以上離す
・防犯用のセンサーを利用する
水性塗料の選び方と安全ポイント|赤ちゃんがいる家庭向け

|
水性塗料とは、希釈を必要としない、もしくは有機溶剤の代わりに水で希釈する塗料です。有機溶剤を使用しないため臭いがほとんどなく、発火のリスクがないため取り扱いが容易。近年では油性塗料と同等の耐久性をもった製品もあり、乾燥時間が長い・価格が安いなどのメリットがあります。<br> ひと昔前は油性塗料が主流でしたが、2005年頃に塗装工事において比率が逆転し、水性塗料が多くを占めるようになりました。 |
VOC含有量が少ない・ゼロ
水性塗料といっても、どの製品も全く同じ成分が含まれているわけではありません。中には、VOCを含む水性塗料もあるので、成分表を見て、「どれくらいのVOCを含むのか?」を確認しましょう。
一般的な油性塗料のVOC含有量は30〜60%、それに対して水性塗料のVOC含有量は7%以下とされています。赤ちゃんがいる家庭で使用する場合、VOC含有量はゼロに近ければ近いほど安心です。
知っておきたいのが、「低VOC」と書かれていても、VOCが全く含まれないわけではないこと。
もし、VOCが全く含まれない塗料を使いたいなら、「ゼロVOC」の塗料を選択すべきです。オーガニックペイントなどがゼロVOCの塗料に該当します。
ホルムアルデヒド放散量が少ない
ホルムアルデヒドは塗料や接着剤、防腐剤などに含まれるVOCです。赤ちゃん用の下着や靴下、寝具といった繊維製品に含まれることもあります。赤ちゃんがいる家庭で塗料を選ぶ際は、ホルムアルデヒド放散量も配慮してください。
ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因の一つであり、大量に吸引すると粘膜や皮膚に炎症を起こすことがあります。
建材や塗料には、ホルムアルデヒド放散等級と呼ばれるものがあります。等級が高いほどホルムアルデヒド放散量が少なく、人体や環境への影響が少ないです。
以下で、等級表示の一覧を確認してください。
|
等級 |
制限 |
|
表示なし |
使用禁止 |
|
F☆☆ |
使用面積制限あり |
|
F☆☆☆ |
使用面積制限あり |
|
F☆☆☆☆(フォースター) |
使用面積制限なし |
シックハウス症候群のリスクを抑え、赤ちゃんと安心して生活するためにも、ホルムアルデヒド放散量が少ない塗料を選ぶのがベストです。
添加剤などアレルギー原因物質が含まれない

ホルムアルデヒドもその一種で、他にもイソチアゾリノン系の成分が使用される場合があります。これらは、接触皮膚炎やアレルギーを引き起こすことがあるため、塗装面に赤ちゃんが触れるとリスクが高いです。
赤ちゃんが誤って舐めた場合を想定すると、「添加剤や防腐剤が含まれないこと」も重要な判断基準になります。
また、自然塗料についての認識を再確認してください。
「自然系塗料は水性塗料の一種」「赤ちゃんにも安心安全」と思われがちですが、実際は油性の自然系塗料もありますし、絶対に安心安全とは言い切れません。
自然系塗料の主成分は植物由来の油脂ですが、刺激性のある植物油も存在します。
松由来のテレピン油、d-リモネンを含む柑橘系油などは、皮膚刺激が呼吸器刺激の可能性が報告されているため、赤ちゃんがいる家庭での塗装では配慮が必要です。
使用する場合は、乾燥中に大量に吸い込んだり、塗装面に触れたりしないように対策をおこないましょう。
まとめ|赤ちゃんがいる家庭で塗装する時は「人体にやさしい」塗料を選びましょう

特に、赤ちゃんが長時間過ごす子ども部屋の内装やベビーベッド・ベビータンス・おもちゃなどのDIY塗装を行う場合、赤ちゃんへの大きな影響が懸念されます。水性塗料を選ぶことを前提とし、製品のVOCやホルムアルデヒドの含有量を必ず確認するようにしましょう。
近年の水性塗料は耐久性が向上しており、安全性との両立が図られています。室内用途であれば、過度に心配する必要はありませんよ!

WEBライター 原野 光佳(はらの るか)
WEBライターとして、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。インテリアデザインやおしゃれな家具・雑貨、色の持つ効果などに関して勉強中です。化粧品や食品などもオーガニックを好んでおり、ユーザー目線でオーガニックペイントの魅力を伝えていきます!
