ペットを飼っている家庭で塗装する際は、塗料がペットに与える影響を考えなければなりません。
ペンキを含む市販の塗料は、どれもペットに安全というわけではなく、ペットにとって危険な成分が含まれていることがあります。塗装する人の負担を軽減するためにも、耐久性だけでなく、安全性の高さも考慮して塗料を選ぶ必要があるでしょう。
このコラムでは、塗料がペットに与える影響、ペット別の注意点、ペットと安心して生活するための安全な塗料の選び方を解説します。
目次
よく飼われているペットの種類

飼育しているペットの種類は、犬がもっとも多くて44.4%。続いて猫(38.4%)、魚類(14.9%)、鳥類(7.6%)、爬虫類(4.8%)、げっ歯類(3.2%)、うさぎ(2.5%)がランクインしました。 同じアンケート内で、「ペットを飼っていて気になること・困っていること」について、ペットの病気やケガを心配されている飼い主さんが多いことも分かります。 また、ペットの家族化に対する意識調査(サンセルモsorae調べ)では、72.9%の人がペットは家族と同等であると答えています。 大切なペットと長く一緒に生活できるよう、有害物質の影響を防ぎ、安心安全な塗料を使用したいですね。
塗料がペットに与える影響とは?

塗料がペットに与える影響を、具体的なケースとともにみていきましょう。
塗料の有害物質による健康被害
ペンキやニス、オイルなどの塗料にはペットにとって危険な化学物質(有害物質)が含まれていることがあります。有害物質の影響で、人体やペットに健康被害が生じる可能性があるため、塗料の「成分」には十分留意しなければなりません。
塗料に含まれる有害物質の代表的な例がVOC(揮発性有機化合物)です。VOCは塗料が乾燥する際に大気中に放出されるため、呼吸を通して体内に入る恐れがあります。
常温でも蒸発するため、塗装した壁などから長期的に放出される可能性も否定できません。
VOCは、主に塗料を希釈するのに使用する「有機溶剤」に含まれています。
具体的な物質として、ホルムアルデヒド・トルエン・キシレン・ヘプタン・アルコール・メチルエチルケトンなどが挙げられます。
異常行動や中毒症状のリスク

有機溶剤に曝露された動物に関する研究では、トリクロロエチレンやキシレンに晒された動物は、興奮性が増加する傾向にあったと報告があります。反対に、ベンゼンのように行動を抑制する作用が確認された物質もあったようです。
身体的な中毒症状として、以下の例が挙げられます。
・嘔吐
・下痢
・呼吸困難
・食欲不振
・目や鼻、喉への刺激作用(不快感、くしゃみ、咳など)
このほか、皮膚に付着した際の皮膚刺激のリスクもあります。例えば、ホルムアルデヒドは、皮膚や粘膜に対する刺激が強く、アレルギー性皮膚炎の原因になる物質です。
公的機関の注意喚起や研究結果などをみても、有機溶剤が含まれた塗料はペットに安全とは言えないことが分かります。
発がん性物質によるリスク
VOCなどの化学物質の中には、がんを起こす恐れがある発がん性物質に指定されているものは少なくありません。例えば、油性塗料の有機溶剤に含まれる「N,N-ジメチルアセトアミド」は、長期毒性試験で実験動物にがんを引き起こすことが確認されたという報告があります。
それ以外にも、過去に化学物質と発がん性に関するさまざまな研究が行われています。人に対する発がん性に関する情報は十分でなくとも、動物に対する発がん性を示した情報が多数確認されています。
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現在、一般的な家庭用塗料における発がん性物質は大幅に規制されている状況です。 過度に心配する必要はありませんが、ペットの安全第一に考えるなら、塗料の成分は確認しておいて損はないと思います。 |
塗料の影響を受けないためのペット別の注意点

とお悩みの方は多いと思います。 ペットの安全を守るためには、それぞれの動物の習性に応じた対策が必要です。
共通事項としては、VOCや有害物質が含まれる塗料を使用する場合、塗装する家の外に移動させた方が良い、ということが挙げられます。
犬の習性と対策
犬は空腹やストレス、退屈などが原因で壁や床を舐めることが多いです。塗料が皮膚に接触することはもちろん、乾く前の塗料を舐めた場合、健康被害のリスクが生じます。また、犬は動くものを追いかけて捕らえようとする習性があるため、塗装中のローラーや刷毛に興味を持ち、塗料に接触する恐れがあるでしょう。
犬を飼っている家庭で塗装する際は、塗料の成分に注意すること、犬の目に触れない場所で作業することなどが有効な対策方法です。
猫の習性と対策
猫も犬と同様、退屈を感じた時や好奇心を満たしたい時、壁や床を舐めることがあります。さらに、毛づくろいの習性があるため、体に付いた塗料を口に入れてしまう可能性が高いです。
猫は高い場所を好む習性があり、棚や窓枠、足場のある場所での天井などにも触れる可能性があります。ペットに安全な塗料を使用する、塗料の乾燥前は猫を近づけないようにする、などの対策を行いましょう。
猫専用のキャットウォークを塗装する場合は、塗料の成分には特に注意が必要です。
魚類の習性と対策
熱帯魚などの魚類は常に水中で生活しているため、水質変化に注意が必要です。空気中に揮発したVOCは水面に溶け込むことがあり、ペットの魚類に悪影響を及ぼしかねません。たとえ水槽にフタをしても完全密閉することは難しいため、塗装する家の中に置くことはおすすめできません。
魚類はストレスに弱く、塗料のシンナー臭や環境の変化だけでも体調に影響が出る場合があることを念頭に置いておきましょう。
爬虫類の習性と対策

また、丈夫そうに見えますが、実は皮膚トラブルを起こしやすいため、塗料や有害物質が直接触れないよう対策しましょう。
鳥類の習性と対策
鳥類は、ペットの中でも塗料の影響を受けやすい種類だと考えられます。哺乳類の肺は二方向換気と呼ばれ、横隔膜を利用して気管・気管支・肺胞へと空気が通る仕組みになっています。
一方、鳥類の肺は一方向換気と呼ばれ、「気嚢(きのう)」という器官を利用して呼吸を行います。空気が常に一定方向に流れるため、常に新しい空気を取り込むことが可能です。
その分、室内空気の影響を受けやすく、少量の化学物質でもリスクがあるといえます。
ペットと安心して生活するための安全な塗料の選び方

正しい塗料の選び方さえ知っていれば、ペットを飼っていてもDIY塗装は十分可能です。
ここで、ペットと安心して生活するための安全な塗料の選び方を確認してみてください。
低VOCやゼロVOCの水性塗料
VOCは大気中でガス状になる性質を持つため、塗装した部屋だけでなく、空気を通して別室に移動する可能性があります。VOCはシックハウス症候群の原因にもなるため、各塗料メーカーでも低VOC・ゼロVOCの塗料の開発に取り組んでいます。ペットの安全を守るためにも、VOCの含有量が少ない塗料を選ぶのがおすすめです。
油性塗料は有機溶剤を使用するため、VOCを多量に含むことがあります。ペットのいる家庭では、有機溶剤を使用しない水性塗料を選ぶと安心です。
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VOCや有害物質が含まれる塗料を使用する場合、ペットの安全を考慮し、塗料が完全乾燥してにおいが消えるまでは室内に入れないこと、最低でも1週間は換気を続けることを徹底しましょう。いずれにしても、油性塗料の使用は推奨されません。 |
ペットフレンドリーな塗料
VOC以外にも、ペットにとって危険な化学物質は存在します。「ゼロVOCの水性塗料だから絶対に安全」というわけでなく、有害物質に指定されていない物質が含まれている可能性も考えてみてください。ゼロVOCの塗料を選ぶことは、油性塗料やVOCが多量に含まれる塗料を選ぶよりはるかに安全です。しかし、さらに安全性を高めるには、有害物質を一切含まない塗料を選ぶことが大切です。
無害でペットが舐めても大丈夫な塗料であれば、ペットの家やベッド、キャットタワー、おもちゃなどのDIY製作も楽しめます。
ペットと安心して生活するために、本当の意味での「ペットフレンドリーな塗料」を選びたいですね。
まとめ|家庭での塗料選びはペットの安全第一に考えましょう
塗料のシンナー臭で気分が悪くなった経験をした方もいると思います。ペットは人間以上ににおいや化学物質に敏感で、ちょっとした環境の変化で体調を崩してしまうこともあります。
家庭での塗料選びはペットの安全第一に考えることが重要です。ペットにとって有害な成分が含まれていないことが大きなポイントになります。
ペットのいる家庭で塗料を選ぶ際は、「油性塗料ではなく水性塗料」「低VOC・ゼロVOC」「有害物質ゼロ」の3つをクリアしたものがおすすめですよ!

WEBライター 原野 光佳(はらの るか)
WEBライターとして、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。インテリアデザインやおしゃれな家具・雑貨、色の持つ効果などに関して勉強中です。化粧品や食品などもオーガニックを好んでおり、ユーザー目線でオーガニックペイントの魅力を伝えていきます!
