ペンキは「つやあり(艶あり)」と「つや消し(艶消し)」の2種類に分けられます。
ペンキのつやありは、文字通りと光沢のある仕上がりが特徴的です。主に外壁塗装で用いられており、新築のようなピカピカした状態にできるのが大きなメリットとなります。
では、ペンキのつや消しとは一体どんなものを指すのでしょうか。
古くはペンキといえば光沢のあるつやありが主流でしたが、今はつや消しも需要が高まってきています。
ペンキのつや消しは、「テカテカ感を抑えめにしたい」「落ち着いた仕上がりにしたい」という時に最適です。
このコラムでは、ペンキのつや消しとは何か、特徴や種類、メリット・デメリットを解説していきます。つやありからつや消しにする方法についても説明しますね!
目次
ペンキのつや消しとは何?

艶のあるピカピカとした仕上がりの「つやあり(艶あり)ペンキ」に対して、「つやなし(艶なし)ペンキ」と呼ばれることがあります。
ペンキの光沢は、ペンキの主成分である「樹脂」や「顔料」によるものです。
つやありペンキは樹脂や顔料の粒子が細かく、塗装表面に凹凸ができません。樹脂が塗装表面に塗膜を形成するため、つるつるとした手触りになります。光を多く反射するため、非常に強い光沢が生まれます。
一方、つや消しペンキには、シリカなどの添加剤が加えられており、塗装表面に凹凸ができます。
この凹凸が光を拡散させるため、光沢がないように見えるのです。
この他、光沢が出にくい原料を用いる、成分の粒子を調整する(粗めにする)などの工程を経て製造されます。
つや消しペンキの5つのメリット

ペンキのつやあり・つや消しの選択で悩んでいる方、つや消しペンキの良さがイマイチ分からないという方に向けて、つや消しペンキのメリットを5つご紹介します。
向いている使用場所や用途もあわせてチェックしていきましょう。
上品で高級感のある仕上がりになる
ピカピカと光沢のある塗装面は真新しさを感じさせます。その反面、過剰な艶は見る人によって「眩しい」「チープ」「落ち着きがない」などの印象を与えかねません。つや消しペンキはつやありペンキに比べて表面の光沢が少ない分、光の反射も抑えられます。眩しさを感じさせないのが利点です。 艶ありだとチープに見えやすい色でも、つや消しだと高級感が出ます。
上品で落ち着きのある印象に仕上がることから、室内塗装に向いています。特に、リビングや寝室、和室などのリラックス空間に最適です。
住宅以外でも、オフィスや店舗、教育施設、公共施設、ミュージアムなどあらゆる建物で活用できます。
ビニール壁紙の上からでも塗れる
ペンキのつや消しタイプは、住宅で一般的に用いられているビニール壁紙の上からでも塗装可能です。ビニール壁紙には、柔軟性・弾力性を持たせるために可塑剤が用いられています。
つやありペンキを塗装すると、可塑剤が染み出し、壁紙表面がベタつきを起こすため推奨されていません。
つや消しペンキに含まれる添加剤には、可塑剤を安定させ、ベタつきを防ぐ効果があります。ビニール壁紙の上から塗装したい場合は、つや消しペンキを選択しましょう。
初心者でも均一に仕上げやすい
DIY塗装の初心者でも均一に仕上げやすいのが、つや消しペンキのメリットの一つです。つやありペンキは光を多く反射するため、塗りムラや塗膜の厚み差によって艶に強弱が出ます。不均一な仕上がりが目立ちやすく、刷毛目が残ることもあり、塗装の難易度がやや高めです。
一方、ペンキのつや消しタイプは、光の当たり方に影響を受けにくいため、塗りムラや塗膜の厚み差が目立ちません。刷毛目が残りにくく、DIY塗装の初心者でもムラなく仕上げられます。
経年劣化による変化が目立ちにくい
つやありペンキは経年劣化で艶がなくなるため、変化が目立ちやすいです。ペンキのつや消しタイプは光沢がないので、つやありペンキに比べて経年劣化による変化が目立ちにくいです。
塗り直した場合でも、乾燥後に光沢感や色合いの差が生じにくく、自然に馴染みます。万が一、傷や汚れがついた時でも部分的な塗り直しも可能です。
さまざまなテイストのインテリアと調和する

例えば、マットな質感の壁紙と、テカテカしたプラスチックの家具とはあまり合わない印象です。プラスチックの家具をつや消しペンキで塗装すると、壁紙と質感が統一され、おしゃれな雰囲気になります。
また、ペンキのつや消しタイプは、さまざまなテイストと調和します。和室はもちろん、和モダン、ナチュラル、北欧、ミッドセンチュリーなど、インテリアを統一するのに役立ちます。
つや消しペンキの3つのデメリット

これからペンキを購入する方に向けて、知っておきたいつや消しペンキのデメリットを3つご紹介します。
塗装面が汚れやすい
つやありペンキは汚れにくく、つや消しペンキは汚れが付着しやすいという特徴があります。ペンキのつや消しタイプが汚れやすい理由は、塗膜表面に凹凸があるからです。この凹凸に汚れや埃などが入り込み、蓄積することで黒ずみなどが目立つ場合があります。
綺麗な状態を保つには、こまめな清掃が必要です。
つやありペンキは塗膜表面がつるつるしているため、汚れが付着しにくく、汚れても落としやすい利点があります。
耐久性がやや低い
ペンキのつや消しタイプは、つやありタイプに比べて耐久性がやや低めです。特に外壁塗装の際にそのような傾向があります。その理由は、つや消しのために添加剤を用いているからです。添加剤を加える分、ペンキの主成分である樹脂の量を減らさなければならず、結果的に耐久性が落ちてしまいます。
ただし、最近ではペンキのつや消しタイプでも耐久性を高めた製品が開発されているので、「つや消しの方が耐久性が劣る」とは一概に言えなくなっています。
たとえば、最初からつや消しペンキとして製造されたペンキは、耐久性が大幅に低下することがないため、耐久性と性能のバランスが良いと考えられます。
派手さに欠ける場合がある
ペンキのつや消しタイプは、つやありペンキのような光沢が出ないため、派手さに欠ける場合があります。特に、明度や彩度の低い色を選ぶと、人によっては「落ち着きすぎている」「暗い」などの印象を受ける可能性があるでしょう。
同じ色でも、つやありとつや消しではつや消しの方が色が沈んで見える傾向にある点は注意が必要。ペンキのつや消しで派手さや明るさ、若々しさを演出したい場合は、明度や彩度の高い色を選ぶのがおすすめです。
とはいえ、つやありペンキの光沢は半永久的というわけではなく、多くは2〜3年で艶がなくなっていきます。
艶の有無による見た目の影響にとらわれすぎず、質感の好みで「つやあり」「つや消し」を選びましょう!
ペンキの種類分けについて!艶の度合い別特徴は?

艶の度合いは、塗装した表面に60度の角度から光を照射して、反射した光がどれだけ反対側に到達するかで計測されています。
ペンキの種類と艶の度合い(光沢度)
ペンキのつや消しに厳密な基準や規格はありませんが、一般的に販売されているつや消しペンキは光沢度5%以下のものが大半です。艶の度合いは、つやありペンキに添加するつや消し剤の量などで上下します。
つや消し剤の量を減らして製造されたペンキは、つや消しペンキよりも艶の度合いが高い(光沢度5%以上)です。
これらは、艶の度合いが大きいもの(光沢度のの高いもの)から「7分艶」「5分艶」「3分艶」と呼ばれています。
ペンキの艶の度合い別の特徴
艶の度合い(光沢度)で分けられるペンキの種類は下の通りです。|
種類 |
艶の度合い(光沢度) |
特徴 |
|
つや消し |
5%以下 |
艶が全くないマットな仕上がり |
|
3分艶 |
15%程度 |
角度によって艶を感じる仕上がり |
|
5分艶 |
35%程度 |
つや消しとつやありの中間 |
|
7分艶 |
60%程度 |
適度な光沢と汚れにくさが人気 |
|
つやあり |
70%以上 |
ピカピカとした目立つ光沢がある |
落ち着いた雰囲気を出すには、つや消しや3分艶が最適です。初期性能の高さや目立つ光沢を必要とする場合は、つやあり、もしくは7分艶が適しています。
ペンキの光沢感や艶の持続性は、ペンキに含まれる樹脂の種類によっても異なります。
たとえば、アクリル樹脂に比べると、シリコン樹脂の方が光沢感が強く、艶も長持ちです。
ペンキの光沢度選びで迷ったら、色見本(サンプル)を取り寄せ、明るい場所でさまざまな角度から見え方をチェックしましょう!
つやありペンキをつや消しにする方法

手持ちのつやありペンキをつや消しにすることは可能です。その方法には2種類あります。
つや消しクリア塗料を塗る
一つは、つやありペンキを塗装した上から、つや消しクリア塗料を塗る方法です。DIY塗装で仕上がりを重視するなら、この方法が推奨されています。
つやありペンキの塗装後、しっかり乾燥させてからつや消しクリア塗料を塗る必要があります。
製品によっては、既存のペンキに防汚性や防水性などの保護性能をプラスすることも可能です。
艶調整を行う
もう一つは、つやありペンキにつや消し剤を混ぜる「艶調整」という方法です。 つや消し剤には、「フラットベース」と呼ばれるものがあります。フラットベースには油性専用のものと水性専用のものがありますが、一般的には水性専用のフラットベースが高価なため、最初からつや消しタイプの水性ペンキを使った方が割安です。
ペンキとフラットベースの割合を「3:1」もしくは「2:1」程度にすると、つや消しができます。
ただし、つや消しペンキのデメリットでも説明したように、フラットベースを混入すると、ペンキの耐久性が低下に繋がるため注意が必要です。
まとめ|ペンキのつや消しは添加剤なしの製品がおすすめ!

つやありペンキを後からつや消しにすることは可能ですが、つや消し剤の混入による耐久性の低下が気になる方も多いと思います。
「ペンキの耐久性をできる限り落とさず、マットな仕上がりにしたい。」
そんな時は、添加剤なしのつや消しペンキを選ぶのがおすすめです。
最初からつや消しペンキとして製造されているペンキなら、余分な添加剤が含まれておらず、耐久性も安定しています。 このコラムを参考に、艶ありにするか?つや消しにするか?を再検討してみてくださいね!

WEBライター 原野 光佳(はらの るか)
WEBライターとして、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。インテリアデザインやおしゃれな家具・雑貨、色の持つ効果などに関して勉強中です。化粧品や食品などもオーガニックを好んでおり、ユーザー目線でオーガニックペイントの魅力を伝えていきます!
