ペンキと絵の具の違いとは?成分や用途を徹底比較!

記事 オーガニックペイントサポーター 原野 光佳

監修 シックハウス診断士 加納亜由美

「ペンキと絵の具の違いはどこにあるの?」 そんな単純な疑問を抱いたことはありませんか?

ペンキは壁や家具に塗るもの、絵の具は画用紙や水彩紙に絵を描くもの…というように、なんとなく使い道の違いは分かるものの、明確な違いが分からない人は案外多いはずです。
特に、水性ペンキとアクリル絵具は見た目や発色もよく似ているため、区別がつきにくいと思います。

そこでこのコラムでは、ペンキと絵の具の違いを解説していきます。
成分や用途など、それぞれの特徴を比較していくので、ペンキと絵の具のどちらを使用すればよいか迷っている方は、ぜひご一読ください。

ペンキと絵の具の違いを成分で比較

まずは分かりやすいところで、ペンキと絵の具の成分の違いを比較していきましょう。
ペンキにも絵の具にも「油性」「水性」の2種類があり、それぞれ成分構成が違います。
油性ペンキ・水性ペンキ・油性絵具・水性絵具の4種類の違いにも着目してみてください。

ペンキは溶剤+樹脂+顔料+添加剤で構成

油性ペンキ、水性ペンキともに構成成分は「溶剤」「樹脂(合成樹脂)」「顔料」「添加剤」というのが基本です。 このうち、溶剤以外は塗膜形成要素として働きます。

ペンキに用いられる樹脂には、アルキド樹脂やアクリル樹脂、ウレタン樹脂などさまざまな種類があり、耐久性・耐候性を高める機能を持つものが多いです。また、バインダー(接着剤)の役割も持ちます。

顔料はカラーペンキに含まれる成分で、主に着色する目的で用いられます。

油性ペンキと水性ペンキの大きな違いは、溶剤の成分です。油性ペンキには樹脂を溶解する作用のある有機溶剤が含まれており、シンナーなどが該当します。水性ペンキには粘度調整のために水を使用します。(少量の有機溶剤を用いることもあります)。

そのほか、目的に応じた機能を追加するため、防腐剤やつや消し剤などの添加剤が用いられます。

絵の具は水溶性樹脂+顔料+添加剤で構成

ペンキと絵の具の成分を比較すると、ペンキで使用する有機溶剤を絵の具では使用しない点が異なります。絵の具に有機溶剤が必要ない理由は、樹脂の含有量が少なく、水で溶かして使用できるからです。

顔料は、着色を目的とした成分なので、絵の具には必須となります。

バインダー(接着剤)として、アクリル絵の具にはアクリル樹脂が用いられます。対して、水彩絵の具には「アラビアゴム」と呼ばれる水溶性樹脂が用いられます。

油性絵具は、乾性油からできた「展色剤」が含まれるのが特徴的です。展色剤はバインダーの役割が大きく、主に植物性の油が使用されます。

上記に加え、乾燥を早めたりカビを防止したりする目的で添加剤が用いられます。

ペンキと絵の具の違いを用途で比較

ペンキと絵の具では構成成分が違うため、塗装可能な素材や用途が異なります。

「この素材を塗装するにはペンキと絵の具のどちらがいい?」
「室内塗装に絵の具は使えないの?」
といった疑問をお持ちの方は、以下の比較内容を参考に、最適なほうを選んでください。

ペンキは塗装対象を保護する役目を持つ

一般的に、ペンキは絵の具よりも耐久性や耐候性に優れており、塗装対象を保護する役目が大きいです。

もともと、ペンキは色を付けるためのものというよりは、素材を雨風や紫外線、埃、湿気などから守るために用いられていました。塗料自体は遥か昔、縄文時代の頃から存在していたといわれていますが、日本で初めて顔料が使われるようになったのは弥生時代以降です。

塗料に色を付け、美観を向上するという目的は後から加わった役割。今の家庭用ペンキには、丈夫な塗膜を形成するための樹脂が含まれており、屋外環境にも耐えられる保護性能が備わっています。
耐水性にも優れているため、油性・水性問わず乾燥後は水で流れ落ちることはありません。

木や金属、コンクリート、壁紙(クロス)、石膏ボード、プラスチックなど塗装できる素材も幅広いです。

以上のような機能を持つため、ペンキは外壁塗装や室内塗装、家具塗装に向いています。

絵の具は作品づくりや芸術活動で用いられる

絵の具は絵画や工芸品、アート作品などの芸術活動で用いられることが多く、塗装対象を保護する目的ではあまり用いられません。
その理由は、絵の具の成分や機能にあります。

一般的に、絵の具に用いられている樹脂の量はペンキよりも少ないです。
しかも、絵の具に用いられる樹脂は水で溶け出してしまうものが多く、耐水性が低いため、雨風や砂埃に弱い特徴があります。
よって、絵の具は外壁塗装や室内塗装には適していません。

そもそも、絵の具のルーツや歴史はペンキとは異なっており、絵の具は「絵を描く」ことを目的に作られたものです。特に、水彩絵の具は耐水性や耐候性がないため、絵を描くのに特化した絵の具といえます。
ただし、アクリル絵の具は、水性ペンキと同じアクリル樹脂が用いられるため、乾燥後に耐水性を発揮します。ペンキほどではないですが、水彩絵の具よりも耐候性が高いです。 
また、柔軟性のある塗膜を形成するので、温度や湿度により伸縮する素材にも向いています。

こうした特徴を持つため、アクリル絵の具は絵を描く以外にも、小型家具や小物、室内ウォールアートの塗装などに使用されます。
塗装できる素材も、木や金属、コンクリートとさまざまで、アクリル絵の具をペンキの代わりに使う人もいるようです。

最近では、布をペイントするための「布絵の具」も普及しています。有名メーカーの参入やDIY・ハンドメイドブームなどもあって、オンラインショップでも簡単に入手できるようになりました。

ペンキと絵の具の違いをその他の要素で比較

ここまで、ペンキと絵の具の違いについて、構成成分や用途で比較してきました。実は、それ以外にもペンキと絵の具には細かい違いがあります。

わかりやすく、表でまとめてみましょう。
今回は、油性絵具を除く水性ペンキ・油性ペンキ・アクリル絵の具・水彩絵の具の4種類を比較してみました。

以下で項目別に詳しく説明します。

ペンキは光沢が強く、絵の具は透明感がある

一般的に、油性ペンキは水性ペンキよりも強い光沢があり、美しい艶が出るのが特徴的です。水性ペンキはマットな質感のものが多く、ツヤの有無は製品によって異なります。

一方、絵の具は光沢感よりも透明感が際立った仕上がりです。アクリル絵の具では、乾燥後に色が暗くなる現象が起きることがあります。

色のバリエーション

絵の具のカラーバリエーションは、学童用・一般用の水彩絵の具やポスターカラーなどの基本セットは 12色~24色で作られていることが多いです。赤・青・黄の三原色を混ぜて多彩な色を表現できます。
プロ用のアクリル絵の具や油絵の具はメーカーによっては 100色以上 のラインナップを展開している製品もあります。
つまり、絵の具は基本セットでも混色で幅広い色を作れますが、プロ用になると「混ぜなくてもそのまま使える色」が豊富に揃っているのが特徴です。
ペンキのカラーバリエーションはDIYや建築、インテリアなどに使われ、ブランドごとに色の展開が大きく異なります。一般的なホームセンターのペンキは白や黒、赤、青、黄色など 10~20色前後が中心ですが、インテリア・外壁用ブランドのペンキは数百色規模のバリエーションを用意しており3500色以上のカラーサンプルを用意している海外ブランドもあります。ペンキは混ぜて使うこともできますが、多くのブランドがあらかじめ微妙なニュアンスを揃えているため、好みの色を選びやすいのが特徴です。

海外ではインテリアのペンキが人気でホームセンターでも気に入った色を選ぶとその場で調色できる機械があります。
https://www.organic-paint.co.jp/columns/colormaking/https://shufukulabo.com/repair-a-hole-in-the-ceiling”>《関連情報》ペンキの色合わせのコツは?塗料の調色でアプリが人気

乾燥時間は油性ペンキが早い

ペンキの方が絵の具よりも速乾性に優れている傾向にあります。
温度や湿度などの環境にもよりますが、油性ペンキの乾燥時間は、夏場だと1〜2時間、冬場でも2〜5時間です。ただし、条件によっては6時間程度かかることもあります。
水性ペンキの乾燥時間は、気温23℃で3〜4時間程度です。場合によっては油性ペンキより早く乾燥します。
絵の具はペンキよりも乾燥時間が長く、完全に乾燥するまでに日数を要します。

水性ペンキは有害性や有毒性が少ない

有害性や有毒性が少ないのが水性ペンキのメリットです。「体に害のない塗料を選びたい」「赤ちゃんや小さな子供がいる家庭で使用する」という時は、水性ペンキを選ぶと良いでしょう。

その理由として、油性ペンキにはVOC(揮発性有機化合物)などの有害物質が多量に含まれているためです。
VOCとは、大気中に排出される際に気体となり、光化学オキシダントやSPM(浮遊粒子状物質)の原因となる物質のことです。室内の空気汚染の原因物質としても問題視されており、被ばくにより頭痛やめまい、シックハウス症候群を引き起こすほか、発がん性を持つことが報告されています。
主に油性塗料の有機溶剤に含まれるトルエン、キシレン、酢酸エチルなどがVOCに該当し、その含有率は30〜60%です。 これらの物質は悪臭や刺激臭の原因にもなり、室内塗装には向いていません。

対して、水性ペンキに含まれるVOCは7%以下。「低VOC」「ゼロVOC」などの製品も増えています。臭いもほとんど気にならないため、内壁塗装や家具塗装の使用に最適です。
《参考サイト》塗料 | 消費者庁
《参考サイト》揮発性有機化合物(VOC)の分析 | JFEテクノリサーチ
《参考サイト》環境省 水・大気環境局|すぐにできる VOC対策
《関連情報》低voc塗料とは?その定義を解説

絵の具の有害性はラベル表記で確認

絵の具の有害性・有毒性は製品のラベル表記で確認できます。

一般的に知られている表記は、米国材料試験協会(ASTM)の試験基準をもとに、米国美術材料協会(ACMI)が健康被害の危険性について表示指示したものです。

「急性あるいは健康被害を起こす危険性がない」ことを意味するAPマーク、使用方法によっては健康被害を起こす恐れがある」ことを意味するCLマークなどがあります。

まとめ|ペンキと絵の具の違いを理解して、DIYやアートを楽しみましょう

ペンキと絵の具の違いは思った以上に多い印象です。水性ペンキとアクリル絵の具は特徴が似ているため、どちらを選択するか、特に迷うところではないでしょうか。

ペンキの開発が進むにつれ、種類も多様化しています。黒板塗料(チョークボードペイント)のように、塗装箇所が黒板として使用できるものもあり、ペンキが芸術活動やアート作品の制作に使用される事例もあるんですよ!

室内塗装に選ぶなら、低VOC・ゼロVOCの水性ペンキがおすすめ。油性ペンキと変わらない耐久性を持つ水性ペンキもある上、シンナー特有の刺激臭もありません。
もちろん、絵画や芸術活動、アート作品に使用するのであれば、絵の具も良い選択です。

このコラムを参考に、最適な選択をしてくださいね!

WEBライター 原野 光佳(はらの るか)
WEBライターとして、さまざまなジャンルの記事を執筆しています。インテリアデザインやおしゃれな家具・雑貨、色の持つ効果などに関して勉強中です。化粧品や食品などもオーガニックを好んでおり、ユーザー目線でオーガニックペイントの魅力を伝えていきます!

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